Chaumet
«CONVERSATIONS VIRTUOSES 2»
異なるもの同士が
交差する場所。
Chaumet
«CONVERSATIONS VIRTUOSES 2»
異なるもの同士が
交差する場所。
2023年秋の4日間、ハイジュエリーブランド ショーメと山下泰樹がコラボレーションするイベント『CONVERSATIONS VIRTUOSES 2』が開催された。2021年に横浜・三渓園内にて行われたイベントのセカンドエディションとなる今回、ショーメは会場のデザイナーに山下泰樹を迎えた。彼が描く空間の中で、ハイジュエリーと日本伝統の技を現代的に表現したアート作品が共演する「対話」をコンセプトにした場だ。
私がこの依頼を引き受けて一番初めに考えたことは、「対話」というコンセプトをいかに空間で表現するか。手がかりとしたのは、建築にもよく表れている西洋と東洋の文化に起因する美学だった。『CONVERSATIONS VIRTUOSES 2』では、西洋と東洋を対に置くのではなく、双方に通底する美を融合させることによって「対話」の世界を表現できないか。異なる文化においても、ものづくりの過程の中で交差する点は必ず存在する。そのようなアイデアが基点となった。
中央をメインエリアとし、3つの什器をそれぞれ際立たせながら相互に作用し合う関係性をつくる。シンメトリーな空間を最大限に活かし、繊細かつダイナミックな構成とした。
ウィンドウディスプレイのデザインは同素材で統一し、全体の世界観をつくり出す。
ショーメを象徴するダイヤモンドは、極めて西洋的な“足していく美“の文化の中で生まれた宝石であり、一つの石を幾重にも削り込んで造形された結晶だと捉えることができる。一方、極限までミニマルを追究する東洋の禅に基づく“引いていく美“の思想もまた、抽出された一つの結晶になぞらえることができるだろう。そこで、結晶を“一滴の雫”に見立て、水面に落ちた雫が波紋を描いて静かに広がり、空気中に柔らかな風を起こしていくイメージを描き、自在に変形できる素材を採用した波のような曲線の壁を実空間のデザインに落とし込んだ。
ジュエリーの歴史と技術が凝縮された小さなダイヤモンドと、思想とデザインが凝縮された大きな空間が、互いを引き立て合う。ブランドの思いを汲みながら、一見対極にあるように見えるもの同士が共鳴する世界観を表現した事例である。
足し算によって作り込んだ先に生まれる一つの結集と、引き算によって要素を削ぎ落とした先に見える一つの本質の間に、通底するものを見出すことができないかと考える。
硬さと柔らかさ、優しさと冷たさ、公と個。歴史的建造物の中で見せる現代アート、様々な制約の中で湧き上がる爆発的な創造性。相対的に物事を見ることで、普遍的な価値に気づくことも既存にとらわれない価値が生まれることもある。
対のそれぞれが持つ美しさとは、究極的には一つの美に集約されていくと思う。
半永久的に存在する建築とは異なり、一時的な空間を設計するのは、消えてしまうからこそ大胆に実験できる良さもある。
普通は空間に使われない素材も積極的に使う。波をイメージした柔らかな曲線を描く壁を実現するために辿り着いた素材は、ベルトコンベアに使われる不織布の緩衝材だった。
模型や素材に光を当てながら、実際の空間では光がどのように映るのか実験する。
予算、時間、構造など多くの制約の中で自由なものを作ることは至極難しい。建築や空間のデザインとは、創造性を爆発させて岡本太郎のように作っていくというよりも、みんながオッケーという唯一の針の穴にスルーパスを通す作業のような気がする。
建築やインテリアのプロジェクトは、ある程度やってくうちにだんだんと型ができてきてしまうもの。いかに白紙の状態で、設定から切り離された世界でアイデアを膨らませるのかを面白がっていたいと思う。