Hibiya Central Building
来なかった「未来」のデザインを
再設計する。
Hibiya Central Building
来なかった「未来」のデザインを
再設計する。
『日比谷セントラルビル』は、1983年に竣工したオフィスビルである。建て替えが検討されていたこのビルをリニューアルし、現代に生まれ変わらせた。
元来、ビルは200年ほどの耐久年数を考慮して建てられるが、日本では40年ほどで取り壊されることも多い。人間の寿命が80年だと考えると、20歳にも満たない状態なのだ。日本でも建物を「リボーン」させる試みをもっと増やすべきだと、以前から思っていた。しかし『日比谷セントラルビル』も内装は古さが否めなかった。80年代の未来に憧れたデザインが色濃く残り、どこか宇宙を思わせる白い光の無機質な意匠。当時最先端だったデザインが描いた未来像は、40年経ってもやってこなかった。そのギャップを埋めるように「空間としてあるべきかたち」に戻すデザインを手がけた。
外構のレンガ造りは残しながら、植栽や地下につながる階段の案内サインを一新。
窓のサッシやモールディングなど、天井のパターンとリンクする格子状のモチーフを取り入れることで、より統一感のある空間に。
建築やインテリアのトレンドはファッションのようなスピードでは移り変わらない。みんなが「いいよね」と感じるものは、案外トラディショナルでコンサバティブだ。だから今回のプロジェクトも、人々が長い歴史のなかで見て選んできたデザインをベースにしながら、モダンな印象で包んだ。そうすればおそらく、40年後に見ても良さは変わらないのではないだろうか。
印象的なファサードを生かしながらも、人が触れる部分には現代的な素材を用い、天井のパターンは、クラシカルさとオリジナリティを両立した線を引いた。あくまでオフィスビルではあるが、編み込んだディテールや、床やサッシなどの素材と形状にこだわり、手仕事感を残した。
昔からある良さにきちんとフォーカスし、生かしていく。過去の時代をどのように継承し、どのように新しいデザインにするか。私たちはそれを考え続ける必要がある。
Ryuji Nishiguchi
Marija Mateović
Kennie S. Minglana
Kazuya Hinoki
Haruka Inouchi
Kazuki Someya
「壊す」から「活かす」へ、変化するデザインの役割
既存改修だからこそ CO₂ 排出量は激減。 新築にはできない環境配慮型のビルへ
本来であれば建て替えをしなくても適切に改修していけば十分に持つはずの日本の建築。これからは高度経済成長期やバブル期に建てられた建築をインテリアのように短いサイクルで丸ごと建て替えるのではなく、経年を受け入れ、時代に合わせた改修を行い、長期的に活用していくべきである。
老舗の温泉街がフルリニューアルしてモダンになりすぎると、残念な気持ちになる。継承するべきものは、継承するべきだと思う。そのうえで時代に合わせながら、どう新しいデザインに仕上げるかを考えたい。
過去の人が考えた未来は、どうしても現在の人から見るとギャップがある。「来なかった未来」のギャップを埋める作業が必要だ。
中途半端に近未来を描くよりも、僕たちが長い歴史で育んできたデザインにする方が、未来にも受け入れられるのではないだろうか。
人の手仕事感をディテールに入れていく。作った人が想像できると、重厚感や空気感が出てくる。
かつて、建築は工芸品だった。技術と彫刻家の集合体として建てられていた。
温かみを視覚的に与えたり、一癖ある家具を選んだり、誰も気づかないようなユーモアをちょこちょこ入れる。
面倒くさいと思っても、いちいちディテールまで丁寧に作り込む。簡単に言うと、ネチネチ。もう本当に、ネチネチやる。
服を決めるのと同じ。今日はこのセーターがアイコンだよね、とメインが決まれば、それを中心に合わせていく。
ピンクをピンクのまま使うこともないし、原色の青を使うこともない。何色か答えられない世界に連れていきたい。
日比谷セントラルビル - HIBIYA CENTRAL BUILDING 三井物産都市開発 日比谷セントラルビルの公式サイト。日比谷の街並みにとけ込む、快適かつ上質な空間を創造。
新築は0からの作曲。リボーンは原曲をいかしたアレンジ。元をいかしながら曲調はガラッと変えなければいけないけれど。