Villa ASO
建築が
進みたがっている方向へ。
Villa ASO
建築が
進みたがっている方向へ。
代官山・旧山手通りに面するアール・デコ様式を多分に取り入れた建物は、もとは昭和初期に建設された旧邸宅である。その建物を改装し、リストランテとカフェを内包する『ASO』がオープンしたのは1997年のこと。以来、代官山のシンボリックな“顔”として多くの人々に愛されてきたことは言うまでもない。
伝統と歴史の深い『ASO』のリニューアルプロジェクトを手がけるにあたり、『ASO』の魅力を引き出すデザインはもちろん、経年劣化の解消や動線の改善など、物理的な課題をデザインで解決していった。一方で、「建築が進みたがっている方向」というものに目を凝らし、耳を澄ませ、感覚的にとらえることを大切にした。
『ASO』に愛着を持つ人々の記憶を継承するように、建物の歴史を汲み、その原型を活かしながら、店舗全体のデザインを大きく刷新する。しかし、鍵となるのは、あたかも以前からそうであったかのように、人々の『ASO』の記憶にさりげなく馴染み、違和感のないデザインにすることだった。「以前はどんなデザインだったか思い出せない…」と思わせることができたら、成功である。
樹齢300年のケヤキを受け継ぐ、クラシカルな洋館。壊すか、保全して残すかの2択ではなく、時代の呼吸に合わせて、古い建物を⽣かしながら新しいものへと変えていく。
空間の中に何層にも重ねたレイヤーが美しさを引き立て合う。ガラスドアの木サッシ、座面を新調したアンティーク調のチェア、腰高収納にあしらった石・木・真鍮、壁面の柔らかいファブリック仕上げもポイント。
それぞれが思い出の中に『ASO』の鮮やかな記憶を持っている。人の記憶のメカニズムとして、記憶色は実際色よりも高彩度になることが知られているが、思い出というものは、それが素晴らしい瞬間や場所であればあるほど、時の経過とともに美化されるものでもある。その期待に応えるように、建築が進みたがっている未来と、人々の持つ美しい記憶の先にある未来をデザインで融合させる空間を実現した。
Marija Mateović
Iva Pejčić
Naoki Goto
建築は時代と呼応するように価値を更新できた方がいい。
思い切って髪を切った時、似合いすぎていると元の髪型を思い出せないハマり感。「前からその髪型だったよね」と思われる感じ。記憶が更新させると言い換えてもいいその感覚を作り出したい。
髪型を思い切って変えた友人が、あまりにも自然にフィットしているがために、周囲が以前の髪型を思い出せなくなる。
建物のリニューアルという観点で見た時、日本では「壊すか」「残すか」の2択になってしまうことが多い。
目指すべき建築物との向き合い方
建物にはその建物が持っているジャンルとDNAがある。
思い切りやるけど、誰にもバレないようにやる。
記憶色は鮮明である。記憶は美化される。だから、古い建物に着手する時、その記憶に先回りをして、記憶の先に行くものをデザインすることが大事である。
リニューアル前のASO
建築は進みたがっている方向がある。音楽で言う”コード進行”のようなもの。「こう来たら、こっちに行くよね」と、時代と共に進行していく。
モダンという言葉が邪魔をして、クラシックの表現が苦手になっている人は多い気がする。
エモーショナルな街の記憶。
建築家は研究者ではない。情報がゼロではいけないが、リサーチよりもインスパイアを大事にした方がいい。自由な表現は歴史からだけでは生まれない。
僕の中には、理屈っぽい人と感性でやる人のふたりが共存している。そのふたりが良きタイミングで出てきてくれる。
自分らしさとは、あえて入れようとせずとも、自然と入ってくるもの。だから、どんな空間でも自分の色になっている。
細部が積み上がって、全体が完成することもあれば、全体から細部が生まれていくこともある。僕の場合、全体からのほうが多い。